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若い世代へ日本酒の良さと楽しさを広めたい!老舗企業から生まれた若手プロジェクト「別鶴(べっかく)」の物語

2023.08.1
By 沖明香

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写真提供:白鶴酒造株式会社 「別鶴」プロジェクト
Text by 沖明香


昔、パン作りにハマったことがある。

全粒紛やオリーブオイル、天然酵母を使った噛み応えどっしりとした、素材の味がそのまま味わえるパンだ。

ある日、酵母がレーズンや果物の表皮に付着しており、パン作りの酵母に使用できると知り試してみた。

最初はただ水に沈んでいたレーズンから、数日たつと徐々に気泡が出てきて甘やかな香りがしてくる。

徐々に変化していく様は、「生きている」感じがして愛着が不思議と湧いてくるものだ。

最近では麹を使って、塩麴やたまねぎ麹、お味噌もつくっている。

以前Twitterを見ていたら麹菌について面白い話をみつけて感動したことがある。

日本ではお味噌に甘酒に日本酒に醤油にと大活躍の麹菌だが、元々は毒を発する自然菌を祖先に持っていたといわれている。

麹菌は突然変異した毒素を失った優良な菌を選定し、日本という国のなかで先人たちが時間をかけて技術をもって育てあげた日本にしかない菌なのだ。

本来毒素を発する菌が、今や日本でだけ体にとってもよい菌となっているなんてロマンチックではないか。

国菌にも指定された、日本のソウル菌としてもっとみんなにもその良さを推したい。

ただお味噌や醤油、みりん、甘酒などは私にとって身近なのだが、あまり身近でないものがある。

それが日本酒だ。もともとお酒がさほど強くないことと、日本酒の一口飲んだらカッとする独特の風味を、どう扱っていいのかわからないのだ。

しかし美味しいお米と麹からつくられる日本が誇るお酒を美味しく楽しみたい気持ちはずっとあった。

そんな時に知ったのが、老舗企業白鶴から生まれた別鶴プロジェクトだった。

2018年12月5日、日本酒業界の老舗企業である白鶴酒造がクラウドファンディングを行った。

20〜30代の若手社員だけで構成される商品開発プロジェクト「別鶴(べっかく)」が開発した商品だ。

「新しい日本酒の世界を覗こう」がコンセプトで、日本酒に馴染みの薄い若い世代でも楽しめるように、社内の有志のメンバーが集まり試行錯誤してつくられた。

「木漏れ日のムシメガネ」「陽だまりのシュノーケル」「黄昏のテレスコープ」の日本酒3本。

左から「木漏れ日のムシメガネ」「陽だまりのシュノーケル」「黄昏のテレスコープ」(写真提供:白鶴酒造株式会社)

変化する1日のシーンごとをイメージしてつくられた見た目も可愛らしいお酒たち。

白鶴といえば、赤い紙パックに大きな丸が描かれている日本酒「まる」のイメージが強い。

こんな可愛くておしゃれな日本酒も出しているのが意外だった。

最近では、若い女性のインスタグラマーも日本酒を紹介しており、様々な蔵元も伝統的な日本酒のほかに、若い人も飲みやすくて新しい日本酒づくりを行っている。

個人経営の酒蔵も老舗の大手の酒造メーカーも、伝統を守りつつも、新たな可能性をひらき未来の消費につなげることは、同じく抱える課題だ。

わたし自身、日本のすばらしい麹菌を活用した日本酒をもっと楽しめるとうれしいし、伝統文化としてずっと残ってほしいと思う。

イタリアでお酒の代表といえばワインだし、日本古来のお酒の代表は日本酒だ。

ワインに至っては世界中で消費されているが、日本酒は日本でも消費が少ないのは寂しい話だ。

未来に残していくためにもやはり若い世代の人たちの消費は不可欠なのである。

そしてそのために若い世代へ日本酒をひろげる活動をがんばっている企業や酒蔵さんを応援したいと思うのだ。

老舗企業という立ち位置の中で、日本酒の可能性をひろげる新しい挑戦をはじめた別鶴プロジェクトは、どんな想いから生まれたのか。

別鶴プロジェクトメンバーである梶原さん、平井さん、塩谷さん、久保田さんからプロジェクトについてお話を伺った。

別鶴プロジェクト会合の様子(写真提供:白鶴酒造株式会社)

日本酒業界が感じる未来への危機感

──私のイメージでは、日本酒は幅広い人々が普段の家飲みで飲むより、好きな人がお店でこだわって飲むイメージがあります。あらためて日本酒の市場は現在どのようになっているのでしょうか。

梶原:日本酒の国内消費量は1970年代をピークとして右肩下がりで、現在ではピーク時の三分の一ぐらいしかない状態です。

日本酒の国内消費が減っているのは、アルコール離れだけではなく、1970年代と比較してユーザーが選べるお酒の種類が豊富になったことも一因と考えられます。また日本酒は地酒など銘柄の種類が非常に多いため、好きな人がこだわって飲むイメージにつながるのかもしれませんね。

一方で海外では日本酒の認知が広がってきており消費量が伸びています。特に欧米では、ヘルシーな食事として注目されている日本食の広がりとともに、日本酒を楽しむ文化も少しずつ広がっています。

──やはり国内では日本酒を飲む人たちが減っているということですよね。お酒を飲むことの新しい価値を伝えることが大切になるかと思います。白鶴さんとしてはどのような課題設定をして対応されているのでしょうか。

梶原:白鶴としては、飲酒年齢層の高齢化を課題と考え、40代以下の若い方々にお酒を身近に感じてもらい、ユーザーになってもらうことが重要と考えています。

例えば、白鶴には「まる」という主要商品があり、ユーザーは50〜70代の方がメインです。しかし年代的にも健康を考えてお酒を控えたり、そもそもお酒を飲まなくなることも多く、飲む方が減っている状況があります。

こういった現状を踏まえて、別鶴プロジェクトのように若い世代にお酒を飲む新しい価値を伝える活動はとても大切だと感じています。

左から「フクロウのうたたね」「ウミネコのひとやすみ」(写真提供:白鶴酒造株式会社)

──別鶴プロジェクトを立ち上げようと考えた際、既存事業の課題点なども含め、どのような取り組みをしていこうと思われたのでしょうか。

梶原:会社や業界全体の課題である若者の日本酒離れを解消するために何ができるかが大きなテーマでした。

若い世代が抱く日本酒のイメージは、一人でしっぽりと飲んだり、どこの純米大吟醸はおいしいと銘柄などに詳しい通の人が楽しむような飲み物という印象が少なからずあると思います。

そのため、今まであまり日本酒に触れてこなかった若い人からすると、たくさんある種類のなかで何から飲めばいいのか分からないし、楽しみ方も分からないんですよね。

別鶴プロジェクトでは、日本酒は堅苦しい飲み物ではなく、大人数も含めた様々な場面で自由に楽しめるお酒でもあることを伝えていきたいと考え、そんな場面にピッタリの商品を開発していく流れになりました。

──同業他社も日本酒の新たな価値を知ってもらうための動きがおそらくあるかと思いますが、打ち出す際の違いは意識されましたか。

梶原:自社も含め、同業他社も販売している若い人に向けた日本酒には、例えば甘口でアルコール度数も抑えたスパークリング清酒などがあります。このように一般的な日本酒とは性質の違う飲みやすい日本酒を提供するアプローチは、日本酒の飲用ハードルを下げて裾野を広げるという効果があります。

一方で、入口となる日本酒の特徴が日本酒本来の特徴から遠すぎると、一般的な日本酒を飲んだ時に全然違う印象となってしまいかねません。別鶴プロジェクトでは、別鶴商品を入口として様々な日本酒を楽しんでもらいたいという思いがあります。

日本酒本来の良さやエッセンスも備えながら、日本酒に馴染みの薄い若い人でも飲みやすいものを開発することを意識していました。

(写真提供:白鶴酒造株式会社)

──今までの白鶴にはなかった若い人を対象にした日本酒をつくると決めた際、どのようなコンセプトを立てたのでしょうか。

平井:コンセプト立ち上げのきっかけは、プロジェクトの打合せの中で、同世代で集まった時に気軽に持ち寄れる日本酒がないよねという話が出たことです。

年配の方に喜んでもらえるような日本酒は当社の商品にもあります。ただ手頃な価格で飲みやすく、さらに少し特別感もあるような、20代、30代の若い世代に好まれる日本酒がありませんでした。

そういった経緯から、商品コンセプトとして中身やデザインも含めて若い世代に面白そうと興味をもってもらえることを重視していきました。

塩谷:デザイン面でいうと、ターゲットは男性だけでなく女性も対象だったので、可愛らしさや日本酒っぽくない名前にしようというのがありましたね。

飲んだ時に、ボトルを見たら純米酒なの?と驚くような、日本酒の堅苦しいイメージを覆すような柔らかなデザインやネーミング、親しみやすさを意識してみんなでつくっていきました。

──別鶴のプロジェクトが立ち上がり一期二期を経て、現在はプロジェクトも三期目に入ると伺いました。三期から入られることになる久保田さんからみて一期目、二期目のプロジェクトはどう見えていらっしゃいますか?

久保田:プロジェクトを知ったのがちょうど入社1年目の時で、第一弾の商品が発売された頃でした。就職活動中はまったく知らず、若手でも自分たちの手で商品を開発して出せることに衝撃を受け感動したことを覚えています。

老舗の会社なので、新しい革新的な事はなかなかできないと思っていました。別鶴プロジェクトでの商品開発の話を聞いたときにいつか関わってみたいと思いました。

実際に商品を飲んだ時も今までにない味わいや強いこだわりを感じ、人に紹介したくなるお酒だと思いました。別鶴プロジェクトに、これから関わることができてうれしいです。

ラボ試験の様子(写真提供:白鶴酒造株式会社)

老舗企業の若手社員から自発的に生まれたプロジェクト

──プロジェクトの立ち上げの際は時間も労力も資金も必要です。白鶴のスローガンと合致したからこそスタートできたのだと思いますが、社内ではどのような動きや議論があったのでしょうか。

梶原:発起人である別鶴プロジェクト初代リーダーが、熱い気持ちで積極的に会社を説得していくところから始まりました。

飲酒量の少ない若い人たちに向けての商品開発なので、スーパーの店頭に並ぶ当社のメジャー商品と比較すると、どうしても規模感が小さくなってしまいます。会社の上層部からすると、全社を横断して取り組むプロジェクトとしては、数字上での採算は決して大きくないのではとの意見もありました。

しかし、会社としても若い人へ裾野を広げないと、存続が難しくなる課題があります。若い人たちへのアプローチが、企業存続という観点で大きな意義をもつことを会社に強く伝えることで、プロジェクトを始める承認が下りました。

他にも、若手でも声をあげることで商品開発に参加できることは、社員のモチベーションアップにもつながります。さらにお客様に対しても、白鶴の老舗の堅いイメージを覆して、新しいことに若手が取り組める柔軟性のある会社というイメージを持ってもらえます。

平井:プロジェクトを立ち上げるうえでもっとも大変な部分の議論をリーダーが担ってくれていたおかげで、プロジェクトがスタートしたあとはスムーズに進行できました。

──白鶴の商品として出すにあたって、最終的な味の決定は大事なポイントだと思います。斬新すぎても白鶴の商品としては出せないこともありますよね。この辺りはどのように理解を得ていきましたか。

平井:味に関しては、上層部の方からなにか言われることはほとんどありませんでした。もちろん普通の日本酒とは少し違うとの意見もありましたが、味に関してはほぼ変えることなく承認をいただきました。

──そこの理解があるのはすごいですね。

平井:初代リーダーが中身やデザインの決め方も含めて上層部を説得してくれたからです。通常の商品開発だと、色々な立場の人の意見を聞きながら商品の味やデザインを決めていき、社長の承諾を得て商品を出す流れになります。

しかし通常の開発の流れで進めてしまうと、自分たちが本当につくりたいものがつくれなくなってしまうのではと危惧していました。

このプロジェクトでは中身やデザインに関してもメンバーの裁量で決めていくことを前提にスタートした形になります。

──今回の取り組みはブランディングの目線からも新しい風穴をあけるタイミングのように思いました。仕事の進め方としてブランディングでも意識されたことはありますか?

塩谷:パッケージに関しては、既存の白鶴らしさや特徴にとらわれずに、いかに見たときにいいなと感じられるようなものにするかが重要と考えました。

既存の白鶴商品とはひと味違う商品になるので、メンバーの意見を出しあってみんなで面白いと思えるところまでかなり話し合いました。メンバーが納得できるネーミング・デザインにたどり着くまでが大変で一番時間がかかりましたね。

左から「そよ風のクローバー」「お日様のしゃぼん玉」(写真提供:白鶴酒造株式会社)

プロジェクトから見える白鶴社内文化と手探りの挑戦

──第一期、第二期とプロジェクトのメンバーをどのように募ったのかを教えてください。

梶原:第一期は初代リーダーからの声かけにより、メンバーを募りました。

会社の風土なのか、様々な部署の若手が集まって飲みに行く機会も多くあります。その時に「こんな面白いお酒を考えているけど商品化できないかな」「面白い酵母がとれたけど使えないかな」などいろんなアイデアが出てくるんですね。

会社を動かして新しい商品をつくるのは難しいとはわかっていながらも、熱い想いを持っていたメンバーも多く、話が尽きないこともしばしばでした。

このような中で、リーダーがプロジェクトに興味ありそうな人に声をかけて、一緒にやらないかと打診しながらメンバーを集めたそうです。

──第二期はどのような集め方でしたか

平井:第二期はすでに第一期の活動が知られている状態だったので、興味を持っている人や次回はやりたいと話していたメンバーもいました。各部署内でメンバーになりたい人を応募し、手を挙げた方にメンバーに入ってもらった形です。

──第一期はリーダーの方の指名で二期は手を挙げる形だったのですね。第三期どのようにメンバーを集める予定でしょうか。

久保田:基本的にはプロジェクトで行う企画に興味を持っている方にメンバーに入ってもらいたいと考えています。

第一期、第二期は商品開発メインで進んできました。第三期でも必要なタイミングで開発は続けていきつつ、消費者イベントなど別鶴をもっと知ってもらう活動に力を入れていくつもりです。イベントで人前に出て商品をPRするのが得意な人にメンバーになってもらいたいと考えています。

社内お披露目会の様子(写真提供:白鶴酒造株式会社)

──みなさんはどのような想いをもって参加されたのでしょうか。簡単に教えてください。

梶原:日本酒は飲みだすと面白いと思う要素がいっぱいあります。けれど自分の同級生や周りの若い人たちを見ていても日本酒を飲んでいる人はあまりいないのが現状でした。

ただ嫌いだから飲んでいないのではなく、魅力を伝えれば飲んでもらえるのではないかと思っていたんです。なので日本酒の魅力を知るきっかけになるような商品をつくりたいと思いました。

平井:私も同年代に飲んでもらいたい事が一つ大きくありました。あとは日本酒の味わいの幅は広くないと思われがちなのですが、実際には色々な味が作れるんです。

プロジェクトの商品を通してそれを体感してもらえるのではないかなと考えています。そういう意味で別鶴商品を飲み比べて頂いて、味の幅広さを楽しんでもらえればと考えています。

塩谷:わたしは別鶴プロジェクトが始動した時は営業として働いていました。プロジェクトの存在は知っていたものの、立ち上げのメンバーではありませんでした。

ただ、若い人向けの商品という明確に対象を設定した商品は自社では珍しく、味も一般の日本酒とは違ったことから、特別な立ち位置にある商品だと思っていました。

新商品の開発業務は経験が必要で、なんとなくベテランや若手の中堅の方がやる内容のイメージがあったんです。わたしのように商品開発の経験がほとんどない人間でも声をかけていただけたのが驚きでした。

経験がなくても参加できるプロジェクトに関わりやすさを感じたのとともに、せっかくお声がけいただいたのでチャレンジしたいと思いました。

久保田:わたしはこれからスタートする感じですが、もともと白鶴に入ったのは日本酒が好きだったからです。

入社してから別鶴の存在を知り、若い人に向けた商品を若手がつくっていることに共感してずっと入りたいと思っていました。

酵母選定の様子(写真提供:白鶴酒造株式会社)

──別鶴プロジェクトではどんなところにこだわりを入れて、どんなプロセスで商品開発を行ったのでしょうか。

平井:別鶴のプロジェクトでは、コンセプトが先にありそこに中身を落としていく形で商品を開発しました。

まずメンバー同士で話し合い、どのような人たちに飲んで欲しいのか、どのような日本酒であればその人たちに選んでもらえるのかを考えていきました。

例えば、友人同士や家族でのバーベキュー、ピクニック、グランピングでは、皆で持ち寄ってお酒を飲むことはありますが、そういう場面では日本酒は中々選ばれませんよね。

なぜそこに日本酒がないのだろうと考え、そういう場面に選ばれる日本酒を造ろうという話になり、それぞれのシーンに合う味わい、パッケージの日本酒を開発していきました。

──拝見したHPの別鶴のプロジェクト紹介に、お蔵入りになっていた酵母も使っているとの記載がありました。なぜ使うことになったのかも詳しく教えてください。

平井:プロジェクトを進めるなかで、当社の強みである、280年の長い歴史で蓄積してきた技術を活かした商品開発ができないかと皆で考えました。

その一つとして、当社が独自に育種を行い蓄積してきた400以上の酵母ライブラリを活用しました。何百回にも及ぶテスト醸造の結果、今まで実用化に至らなかったお蔵入り酵母を使用することでイメージ通りの味わいを実現することができました。

また、隠し味として杉樽に貯蔵したお酒を一部入れる製法も採用しているのですが、これも古くからある樽酒をヒントにした手法です。

杉樽貯蔵作業(写真提供:白鶴酒造株式会社)

──かなりこだわりをもって中身を開発されていったんですね。販売についてはクラウドファンディングを利用されていましたが、500万円以上の資金を集められたんですよね。こちらも大変だったのではないかと思うのですが。

梶原:2017~2018年頃に実施されていたクラウドファンディングの形態は、中小企業やスタートアップによる立ち上げの資金調達を目的としていたものがほとんどでした。

一方で我々は資金がどうしても欲しいというより、クラウドファンディングを実施することで別鶴プロジェクトの取り組みを皆さんに知ってもらうことを目的に取り組んだ背景があります。

老舗企業の白鶴が新しいことに取り組み、それも会社の方針ではなく、若手の熱い想いを軸にして生まれたことも、応援していただける要素になるのではと思いました。

また、プロジェクトを進める中で、我々の商品は必ずお客さんに喜ばれるという自信はありつつも、実際はどうなのかという気持ちもありました。商品を販売するだけだと、自分たちの商品がお客様にどう評価されたかが分かりづらい部分があります。

その点で、クラウドファンディングは支援金額で反響の大きさを見られるというメリットもあります。このような複合的な理由でクラウドファンディングに取り組みました。

結果的に、目標金額を大幅に超える支援をいただけたので、大きな手ごたえを感じることができました。

──クラウドファンディングに関しては全社的に応援する感じでしたか。それともプロジェクトのメンバー中心に行う感じだったのでしょうか。

梶原:クラウドファンディングを実施する前に、メンバーが中心となって商品のお披露目会として、社員にプロジェクトでできた商品を味わってもらう機会を設けました。

その活動が功を奏してか、クラウドファンディングを実施する段階では、プロジェクト活動も全社的に知られていたので、様々な部署の人達から応援いただくことができました。

(写真提供:白鶴酒造株式会社)

別鶴を通して日本酒の新しい価値を創造

──素敵な社風と取り組みですね。最後に新しく別鶴プロジェクトに加わる久保田さんから、今後の活動はどのような展開を考えているのかを教えてください。

久保田:今まで第一期、第二期と先輩方が商品を作り別鶴のブランドを育ててきてくださったので、今後はもっと多くの人に飲んでもらい、知ってもらう活動に力を入れていきたいと考えています。

別鶴のコンセプトの一つに「新しい日本酒の世界を覗こう」があります。

別鶴を通して日本酒の新しい楽しみ方だったり飲み方だったり、他のジャンルのコラボ、音楽などともコラボして日本酒に馴染みのない方たちにも日本酒を知ってもらい楽しんでもらいたいです。

別鶴を知ってもらうことは白鶴の目標でもありますが、今後はもっと大きな目標として別鶴を通して日本酒そのものの良さや面白さを知ってもらうことに力を入れていきたいと考えています。

白鶴酒造株式会社

https://www.hakutsuru.co.jp/bekkaku/

日本を代表する銘醸地・灘五郷に本社を置く老舗酒蔵。1743年の創業以来、「常に変わらず、おいしい日本酒を造り続ける。」を信念に、280年間日本酒を製造し続けている。 主力商品として、日本酒売上No.1ブランド(※)の「白鶴 まる」がある。※インテージSRI+調べ 日本酒 2022年1月~12月 累計販売金額(全国計)2019年に若手プロジェクト「別鶴(べっかく)」初の商品、「別鶴 木漏れ日のムシメガネ」、「別鶴 陽だまりのシュノーケル」、「別鶴 黄昏のテレスコープ」を発売。
 

Writer

沖明香

オンライン秘書/インタビューライター。世界は素晴らしいもので溢れているがモットー。素晴らしい人たちや仕事内容、商品を届けるサポートすること、ライティングでその価値を世に出していくことが喜びです。

Editor

大崎博之

Photographer

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